
八尾市長 大松 佳右 様
2020年7月15日
八尾北医療センター院長 末光道正
八尾北医療センター労働組合執行委員長 藤木好枝
地域の病院・診療所をつぶしてはなりません! 八尾市は市民の命を守るために最大限のやれることをただちに実施して下さい。
1、「もう一つの医療崩壊(全国の地域医療の崩壊)を防ぐ方策を」行って下さい。
全国保険医団体連合会が行った1万件のアンケート調査では、9割近くの医療機関で外来受診患者が減り、8割近くが保険診療収入が減ったと回答しています。
「もう一つの医療崩壊防ぐ方策を」宮城県の医師の声が朝日新聞に掲載されました(4月29日)。「一般医療機関で患者が激減し、経営が急速に悪化」「半年以上続けば倒産も想定」「東日本大震災時を上回る深刻さ。早晩、全国で地域医療の崩壊を招きかねない」「緊急的な財政支援が必要」「新型コロナウイルス感染患者を受け入れている病院の厳しい状況。人的、物的、財政的支援が早急に必要。他方、もう一つの医療崩壊に対しても国の支援を強く要望します」と訴えています。
多くの医療機関でそのしわ寄せが労働者に向かい、ボーナス1/3や半減に、給料10%減とも報じられています。不安と葛藤の中、使命感でやり抜いた医療(介護)労働者への待遇の悪化は断じて許せません。
新自由主義による営利主義と民営化が保健所や感染症関連機関、公立病院を極限的に削減してきたことがコロナの感染拡大を招いたことは広く認識されてきたところです。感染拡大前から多くの診療所と病院はギリギリの経営を強いられていました。減収の補填などの対策をただちにおこなって下さい。
2、「熱中症増加前に発熱外来拡充を」地域の診療所・病院を守り抜きましょう。
コロナ感染拡大の第2、第3の波、熱中症・インフルエンザとの同時流行への対策へ全力を傾けてやり抜きましょう。
八尾北医療センターでは、熱があって保健所に連絡した患者さんが「かかりつけ医に行くように」指示を受け、電話の上受診されたことをきっかけに労働組合で討論をはじめました。熱のある人の診察を行うために、熱のある人と他の患者・職員の動線を分けるためにテントを立てることを決め、シールドや必要な物の確保と掲示を一気にやりました。 他の病院で「聴診器をあてない」「のどを診ない」「熱のある人は追い返される」ということがあることもわかりました。「聴診器一つで始まった」(末光院長)のが西郡の医療です。八尾北医療センターでは聴診器をあてる、のどを診る、おなかが痛ければ触って診る(触診)、血液を採る、おしっこを採る、血中酸素濃度を測るなどの基本的な診察をきっちりやります。これらの基礎的なもので、ウイルス性の熱か、細菌性の熱か、脱水症によるものかなど大まかな判断ができます。保健所につなぐ人。熱のある人はフォロー体制(電話連絡)をとって変化を見逃さないようにしています。「風邪は万病の元」だからです。
保健所の拡充や人員の増員などが急がれますが、「まず保健所に連絡」ではパンクしてしまいます。医療崩壊を防ぐために地域のかかりつけ医・地域医療についても守り充実させるべきです。
「熱中症の治療ができる発熱外来の設置には、人、設備、経営面で多くの課題がある。本腰を入れた国の援助が必要だ。国民に自粛を呼びかけるだけでなく、眼前の診療に関する具体的な対策を国に要望する」
(6月7日朝日新聞 開業医の声)
日頃の状態を知っていればこそちょっとした変化にも気づき、重症化の兆しを見つけることもできます。八尾市の責任の下、地域医療と保健所などとの連携ができる体制を話し合って作り出しましょう。インフルエンザとの同時流行に対して具体的な対策が必要です。そのためにも地域の診療所・病院を絶対につぶしてはなりません。
3、八尾市だけでできないことは国や府に働きかけて下さい。そして八尾市独自でもやれることはただちに実施をして下さい。
八尾北医療センターについて言えば、
①土地・建物の家賃の免除をして下さい。八尾北医療センターは、築39年を超して老朽化が進み、先日7月8日の豪雨で2階の天井から雨漏りがしました。家賃をきっちり払っても、八尾市は一切修繕費を出しません。普通は家賃分の一部を貯めて修繕費にまわすものです。月額56万8000円、年681万6000円の家賃支払いの負担と、修繕費まで払うことはとうていできません。3ヶ月滞納すれば追い出されるという条件まであります。
②借入金の返済を猶予して下さい。八尾市(運営委員会)が八尾北医療センターの運営から手を引いて運営主体が変わった時に、未収の診療報酬2ヶ月分・9000万円を運転資金として借金を背負わされました。現在、借入金の返済は半期で230万円、年460万円の支払いが重くのしかかっています。診療報酬を受け取り、八尾北からも返させるとは2重取りです。
合わせて年1,141万6000円の支払いとなる。1、000万円を超える利益を生み出せる医療機関がどこにあるのでしょうか。あるとすれば、金もうけを一切に優先させ、患者のこともそこで働く労働者のことも考えない医療機関だけがなしうることです。
そもそもこうした不利な条件を呑んででも、私たちは八尾北医療センターを守り地域の人々と共に生きていく道を選択しました。八尾市が運営から手を引いた後に、八尾市から「八尾北医療センターの明け渡しを求める」裁判まで起こされる状況下でした。地域住民と労働者から300通もの民営化・廃止反対の意見が出されました。「たとえ裁判に負けて追い出されてもテントを張ってでも診察を続ける」決断をしました。裁判では高裁で「和解」となりましたが、上記のように非常に不利な条件を強いられました。
八尾北医療センターの「倒産」の現実に八尾北医療センター労働組合が立ち上がり自主管理闘争で診療所を守り抜いています。地域の患者と住民、全国の心ある労働者から寄せられるカンパで何とか経営破綻を防いできました。また、コロナに立ち向かい労働者の団結した力で発熱外来を設置し、熱のある患者もきっちり診察をしています。誰一人診察もせずに帰らせてはいません。
同じ維新の会の橋下氏は「民営化を進めすぎてコロナ危機に対応できなくなった」と言っています。第2波に備えて命を守る具体的な施策をおこなって下さい。
「本運営委員会(八尾市)は20年以上の地域医療を担い、住民からも支持されている『八尾北医療センター』という希望の灯を絶やすことなく、維持発展さすことが最大の使命と考え、・・・八尾市への行政支援を強く要請し、・・・医療スタッフ・患者が一体となった地域医療の推進を図ってまいりたい。」(2004年12月2日 八尾北医療センターの経営移譲にかかる趣意書)と述べています。医療機関が不足する「八尾市北部の広い範囲での第一次医療を担」ってきました。
地域の診療所・病院を守り抜き、コロナの感染拡大に共に立ち向かっていきましょう。
